なぜ生えるか?はどうすれば取れるか?に繋がる
私達の体に生えているすね毛や胸毛といった体毛は一定の過程を経た結果の産物です。体毛が生えるという現象には原因と結果が必ずあります。そしてそんな現象を根本的になくしてしまいたい場合、どこを狙えば良いかというと原因です。
原因を処理しなければ結果を取り除いたとしても再度現象は引き起こされますし、原因さえなければ結果が生まれることはありません。つまるところ「なぜ生えるのか?」という疑問さえ解決できれば効果的に脱毛処理をすることができるのです。
例えば種を植えれば草木が生えます。その茂みが邪魔だからといって草木の表面を刈ったからといって問題は解決しません。ひ弱な草木ではなく、強靭な草木であればなおさら根ごと掘り返さなければ、一定の周期でまた生えてくるでしょう。もし最初から「種が原因で草木が生えている」ということを知っていれば根を掘ればあっという間に問題は解決してしまいます。
この例のように、因果関係が考えられる現象に対処するには原因と結果を明らかにすることが大切なのです。そしてそれは脱毛という問題についても例外ではありません。例えば胸毛のムダ毛をカミソリで処理する場合、それは草木の表面を刈っているだけにすぎず、根を処理しているわけではないのでまた生えてきます。
では根を掘り返せばよいかというと、自分の体なのでそんな単純に物事は解決しません。もし物理的に毛の根本を掘ったなら大怪我を負ってしまうでしょう。
今回はすね毛や胸毛などの体毛が生える仕組みやそこから見えてくる脱毛方法について見ていきます。実際に脱毛処理をするということはどのようなことをするのかしっかりと把握していきましょう。
体毛のサイクルにあわせて脱毛をしていく
体毛にはそれぞれ生え変わる周期というものが存在し、これを毛周期と呼びます。もしこの毛周期がなかったら私達の毛は生まれたときから伸び続け定期的に胸毛を始めとした全身の体毛をカットしなければならなかったでしょう。ですが幸いにも毛にはそれぞれ寿命があり定期的に生まれ変わっているのです。まずはこの辺りから確認していきましょう。
毛周期は大きく分類すると「成長期」「退行期」「休止期」という3つの時期で構成されていて、体毛によってこの時期はバラバラです。全ての体毛が同じ周期で生え変わっていたら全身もじゃもじゃだったりつるつるだったりする時期があることになりますが、そんなことはまずありません。
バランスよくバラバラの毛周期にそれぞれの体毛が従っているからこそ、体毛に関して私達の見た目は安定しているのです。
具体的にどのような流れで毛が成長するのかというと、まずは毛の構造から見る必要があります。毛の最も下にあるのは「毛乳頭」という細胞で、毛乳頭の周囲は「毛母細胞」で覆われています。
そして毛乳頭が毛細血管から吸収した栄養と発毛指令を毛母細胞に伝えることで、毛母細胞は細胞分裂を始めます。この毛母細胞が細胞分裂をしたものこそが胸毛を始めとした体毛なのです。まとめると以下のようになります。
毛乳頭から毛母細胞へ発毛指令と栄養が送られ、毛母細胞が細胞分裂して目に見える体毛になる
簡単に言うなら毛乳頭は「司令室かつエネルギー輸送機関」であり毛母細胞は「体毛を作る現場」となります。そして毛乳頭の指令は一定期間で発令と休止を繰り返すのです。
毛周期の成長期というのはまさしく毛乳頭が「体毛を生やせー!栄養を送れー!」と生き生きとしている状態です。このとき毛母細胞は「イエッサー!」と言わんばかりに細胞分裂しぐんぐん体毛を成長させ、やがて私達の目に見えるほどになります。
そして退行期を迎えると毛乳頭はシーズン終了とばかりに閉店準備を始め、発毛指令も栄養も止めてしまいます。すると同じように毛母細胞も細胞分裂を止め、体毛自体も毛乳頭から離れてしまうのです。根本を失った毛は皮膚に自然と押し出され抜け落ちやすい状態になります。
最後に休止期ともなると毛乳頭と毛は完全に離れてシャッターを降ろすのです。もう次のシーズンが始まるまで毛乳頭は一切活動をすることはありません。
こうした毛周期というサイクルを踏まえて脱毛処理について考えてみましょう。一般的な治療法であるレーザー脱毛の多くは体毛に含まれる黒いメラニン色素に熱を含ませ毛乳頭を焼き切ることを目的としています。では毛周期において最もこの治療が適しているのはどこかというと成長期です。
成長期は、唯一体毛の根本と毛乳頭が結びついている時期であり、退行期からもう毛乳頭と体毛は離れ始めています。休止期にいたっては体毛自体が既に抜け落ちている状況です。ということは成長期にある体毛しかレーザー脱毛では処理できないということになります。
このため、レーザー脱毛を施術してもらう場合、何回もクリニックへ行く必要があります。すね毛や胸毛などを始めとした体毛の成長期を待たなければその毛穴の毛乳頭を処理することはできないからです。何回も処置することにはこうした意味があり、むしろ必然とも言えるでしょう。レーザー脱毛は毛のサイクルを基準とした脱毛方法だったのです。
新たな発見バルジ領域と脱毛の関係
1990年、アメリカで皮膚科学の研究者らにより毛の育成に「バルジ領域」が関係しているという研究結果が発表されました。
これまで毛乳頭と毛母細胞という簡単なモデルで把握していた体毛の成長過程に、新しい要素が加わることになったのです。と言っても確実かつ正確な情報かどうかはこれから検証が進められることになるのですが、ともかくバルジ領域とは何なのか見ていきましょう。
体毛の中部あたりに膨らんだ構造をしている部分があるのですが、これをバルジ領域と呼びます。バルジとは英語で「bulge(膨らみ)」を指し、見た目の通りの領域です。ここには毛の幹細胞の毛包幹細胞と色素幹細胞が存在しています。
幹細胞とは自己複製機能と別の細胞になる機能をもった細胞で、例えば1つの幹細胞がそのまま同じ幹細胞となり、もう1つが別の細胞になるよう分裂していけば無限に増殖できる、といった細胞です。こうした細胞が体毛のバルジ領域にも存在しています。
こうなると毛乳頭が先か毛包幹細胞が先かという話になりますが、これは相互作用によるものと考えることができるのです。毛乳頭には細胞を増殖させる因子が豊富にあり、マウスに移植すればそこから毛が生えますし、毛包幹細胞は毛包の様々な細胞に変化することも確認されています。
そして重要な研究結果としては毛周期が成長期を過ぎ退行期を迎えるとバルジ領域と毛乳頭が接近するのですが、このとき毛乳頭から影響を受けたバルジ領域が活性化することも分かりました。すなわち、毛乳頭もバルジ領域も相互に影響し合いながらそれぞれ体毛の成長にとって欠かせないというわけです。
では脱毛という観点から見るとどうすれば良いかというと、やはり毛乳頭を焼き切るのはもちろん、バルジ領域の処理もしたいところです。幹細胞ですから何らかの作用によって再び体毛が生えてくる可能性はないとは言い切れません。
そこで朗報なのですが、何とバルジ領域を焼き切るタイプのレーザー機器もあったりするのです。ただメラニン色素に熱を蓄えて破壊するという方法は変わらないので、やはり毛周期に合わせた施術が必要となります。
体毛のことを知れば脱毛のことが分かるようになる
これまで体毛がなぜ生えるのか、そしてどうやって脱毛治療を行っているのかについて見てきました。体毛は毛乳頭が原因となって生えるものであり、近年ではバルジ領域が関係していることも分かってきました。毛乳頭とバルジ領域が相互に関係し合って私達の体毛はぐんぐん成長しているということになります。
こういったことが分かっていれば、例えばバルジ領域を焼き切る脱毛機器を使っても効果がなかった場合、毛乳頭を焼き切る機器を試してみる、といった対策を打つことができます。実際に自分がこれから脱毛を始める、もしくはやっている施術内容がどのようなものかを知るだけでも安心に繋がるので疑問に思ったことはどんどん調べていきましょう。